マヴィ代表・田村安オフィシャルブログ

Organic Wine Specialist

カヴァ(Cava)は、かつてスペインではシャンパンと呼ばれていたが…

カヴァはシャンパン製法スパークリングワイン

シャンパン製法で造られるスパークリングワインの生産量、1位はフランス、2位はスペインだ。フランスではAOCシャンパーニュや、シャンパーニュ以外の地方で造られるクレマンが有名で、「クレマン」の次に地方名を付けてクレマン ド ボルドーのように呼ばれる。

スペインのスパークリングワイン「DOCカヴァ」は、単純にCAVA(カヴァ)だけで、地方名を付けずに呼ばれているので、全て同じ生産地のものと思われがちだが実は違う。主生産地はフランスと接するカタルーニャ地方だが、その南のバレンシア地方、北部のリオハ地方、さらにはなんとポルトガルと接するエストレマドゥーラ地方まで産地に入っている。フランス的な感覚からすると変だ。いくら何でも広すぎる!EUの原産地呼称制度は産地名の保護が目的で、フランスのAOCとスペインのDOCは同義のはずだが、これには経緯がある。

19世紀、ナポレオンのフランス軍はピレネー山脈を越えて、カタルーニャ地方に侵攻した。この時スペインにもたらされたフランスの文物の一つがシャンパンだった。カタルーニャはスペインの中で最も進取の気質がある土地柄で、シャンパン製法を学び、地元のぶどうで「シャンパン」を作るブルジョワが現れた。

スペイン産「シャンパン」から「カヴァ」へ

シャンパンはスペイン語では「チャンパン(Champán)」となる。カタルーニャで造られたチャンパンは地元のブドウ品種を使い、軽やかでスペインの食べ物に合わせやすく、また遠くから運んで来て輸入関税もかかる贅沢なシャンパーニュに比べてずっと安価だったので、スペイン全土で飲まれるようになり、カタルーニャ以外でも生産されるようになっていった。

1970年代にフランス政府はAOCシャンパーニュを守るため、圧力をかけてチャンパンの名称を使えなくさせたので、スペイン政府は新たに「カヴァ(Cava)」という、スペインのシャンパン製法スパークリングワイン全体を表わす名称を作らざるを得なくなった。

その後スペインがEUに加盟したため、EUの原産地呼称制度に従わざるを得なくなり、製法を表すカヴァは認められず、産地限定という別の要素を加えることになって、1986年にフランス国境からポルトガル国境までという、広大な限定産地を指定する「DOCカヴァ」が生まれることになった。クレマンのようにワインのタイプを表すのではなく、原産地呼称として「シャンパーニュ」の対抗に置いたのは、スペイン人のフランスに対する反発の現れのような気がする。

大メーカーが牛耳るカヴァ生産

シャンパーニュも大メーカーが牛耳る世界だが、カヴァはそれ以上に殆どが大工場で量産されていて、没個性な単に「安い泡」のイメージがある。それもあってシャンパーニュのRM(Recoltant Manuprant=自分の畑で収穫して製造する)のような、小さいが秀逸な生産者はカヴァには非常に存在しづらい

その希少なRMで、大メーカーの量産カヴァとはだいぶ違うカヴァを造っていると紹介されて、カタルーニャ州タラゴナ県のエル プラ デ マンリュウ村のピベス家を訪ねたのは2017年6月のことだった。

カヴァの「RM」ピベス家の強い個性

モントメル山脈の谷合にある標高500mのエル プラ デ マンリュウは、人口140人の小さな村で、産業と言えるものはぶどう栽培くらいしかない。それでもBARやレストランがあるのは、いかにもスペインらしい。BARの外のベンチに老人たちがいたので、話をしてみた。老人たちは皆ぶどう農家だそうで、「この一帯ではピベス家以外にはワイン醸造している家はどこにもない」とのこと。ピベス家までの道を訊ねたところ、「ついて来なさい」と、脇にキーを付けたまま置いてあった車で先導してくれた。

ピベス家は集落から山に向かい、これ以上先はないというどん詰まり。家の裏に広がる畑は岩山の断層まで続く傾斜地。断層の上にはブルゴーニュのように森がある。いかにも岩盤の上に薄く乗っただけの土壌で、地下水は強いミネラル質と想像が付く。夏場に雨は降らないが、断層の上の森からの地下水脈が流れ来るはずだ。澄んだ青空には陽光を遮る湿気はなく、ぶどうの葉は強い日差しをたっぷり浴びるし、日が落ちると冷え込む。これ以上の条件はないという畑だ。ぶどうは甘やかされることなく、凝縮しパワーを貯め込む

工場で量産されるカヴァは人工的に作った酵母を使うが、ビベスさんはぶどうの皮に着いた天然酵母で発酵させる。安定させるためにこの天然酵母を培養して補うことはするが、市販酵母の添加は一切しない。

力強いぶどうと天然酵母はビベスさんのカヴァに、強烈な個性をもたらす。ちょっと野趣もあるが、面白い。これはチャンパンじゃない。オリジナルな作品だと感じ、お取引をお願いしたのは正しい判断だった。

ピベスさんのカヴァ ブリュット

大量生産品のいわゆる「カヴァ」とは一線を画した、土地の特長を最大限に引き出したオリジナルなカヴァ。年間生産量はわずか1万本!

ソロ カヴァ ブリュット

スペイン・バレンシアのコティーノ家の爽やかでカジュアルなカヴァ。シャンパンと同じ瓶内二次発酵なのに抜群のコストパフォーマンス。どなたにも満足いただけるスパークリングワインです