マヴィ代表・田村安オフィシャルブログ

Organic Wine Specialist

オーガニックワインコラム

今年のボジョレーヌーヴォーの出来は?|2023年はボジョレーらしさを持った優秀なヴィンテージと予想

2023年はどんなシーズンだったか?

コロナ禍が明け再び世界が動き出した2023年、ロシアによるウクライナ侵攻2年目でヨーロッパを巡る社会情勢は不安定が続き物不足と物価高に翻弄され、さらに世界的な気候変動はもはや温暖化ではなく沸騰中の域に達し、日本だけでなく全世界的に前例のない異常気象、ヨーロッパも大雨や猛暑となり、ワイン生産者さんたちにとっては対応するのが大変な年でした。

気候からわかること

ボジョレー地方の中心地Villefranche-sur-Saone市の気象チャートを見てみましょう。

昼の暑さは?

3月までは暖冬ぎみの最高気温、芽の出る4月はかなり低めの気温だったのが、5月からは例年並みからちょっと高めの初夏、6月の開花期は良く晴れて気温が高め、7-8月は26℃台とボジョレー地方としては理想的な推移でした。

夜の冷え込みは?

冬から夏までずっと平年よりも低く、昼も夜もよく晴れて寒暖差が大きく、果実の生育に最高の状況だったことがわかります。

雨は?

2023年は南仏や北イタリアでは集中豪雨や長雨による洪水の被害が出ましたが、ボジョレーでは例年よりも降水量が少なかったことが分かります。

とはいえ2015年のような旱魃ということではなく、夏場も積乱雲が雹の被害を起こすほど発達することもなく、ぶどうの実は水分量が若干少なめのしっかりと凝縮したものとなったと思われますが、その分収穫量は減少するでしょう。

ボジョレーらしい優秀なヴィンテージか

たっぷりの日照と乾燥はぶどうにとっては嬉しいもの。病気の心配がない健康で糖分がしっかりした果実味あるぶどうが収穫できます。

また、夏の気温が2022年程は高くなかったことで、酸のキレも併せ持ったきれいなフルーティーさが期待できるでしょう。

本当に美味しいボジョレーとはこんなワインだという、コクも味も香りも高くバランスした、お手本となる優良なヴィンテージを予感します。

ボジョレーの畑では

ランポンさん(レニエ村・ボジョレー ヴィラージュ地区)

ボジョレー ヴィラージュ ヌーヴォーを造ってくれる、レニエ村のランポンさんは、南仏のような熱波は襲来せず、昨年の夏よりも涼しく、ブドウの房はまったく問題なく育っており、収穫は9月10日ころを見込み、間違いなく美味しいワインになるはずで、大変満足しているとのことです。(8/7の連絡)

シュブランさん(サルセ・ボジョレー地区南西端)

ボジョレー ヌーヴォーを造ってくれる、ボジョレー地区南西端のシュブランさんも、すばらしい出来で、収穫は9月1日に始まり、18日に終了しました。収穫時期に熱波が到来して心配でしたが、果汁は安定して美味しく、安心したとのことです。(9/21の連絡)

2023年のボジョレーワインの味わい予想 

平年よりも日照量が多く、ぶどうは糖分をしっかりと作り、乾燥したため水分は若干少な目の果汁になっているでしょうが、気温が突出することがなかったので、ボジョレーらしい酸味も期待できます。また病害はなく健康に実ったので、微生物汚染はないでしょうから、雑味に繋がるリスクが極めて低く、またアルコール度数もそれほど高くならないのでイチゴ系の香りが損なわれることなく、華やかで魅力的なワインに仕上がるのは間違いありません。

平年より1~2週間早い収穫になりそうで、醸造期間が長く取れますから、11月の解禁日までにはある程度熟成してくるでしょう。

気候変動で、ここ数年翻弄されて来た感がありましたが、今年は久々に王道のボジョレーらしいヌーヴォー、その中でも極めて優良なヴィンテージだろうと予想します。

田村安

マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne