11月17日(木)、2022年のボジョレーヌーヴォーが解禁になりました。果たして前代未聞の偉大なヴィンテージの予想との的中し、本当においしいワインがやって来ましたが、2022年はどんな年だったかを振り返ってみましょう。

2022年はどんなシーズンだったか?
世界中が新型コロナウィルスCOVID-19の猛威に晒されて3年目の収穫、またロシアによるウクライナ侵攻でヨーロッパを巡る社会情勢は激動する中、さらに世界的な気候変動で、日本だけでなくヨーロッパも異常気象となり、2022年もぶどう農家さんたちにとっては対応するのが大変な年でした。
気候からわかること
ボジョレー地方の中心地Villefranche-sur-Saone市の気象チャートを見てみましょう。
昼の暑さは?

3月までは暖冬ぎみの最高気温、芽の出る4月はかなり低めの気温だったのが、5月から急上昇し6月にはまさに熱波到来で真夏の暑さになり、7-8月は30℃を超える猛暑となりました。
夜の冷え込みは?

3月の最低気温が異常に高く4月の発芽は早めだったところ、気温は急降下し、各地で遅霜の被害が出ました。5月以降は平年並みで、昼も夜もよく晴れて果実の生育に最高の状況だったことがわかります。
雨は?

2022年、ヨーロッパでは各地で水不足が報じられましたが、降水量の推移からはその異常ぶりが顕著です。
昨年の9月以降ほぼ最低水準だったのが、1月以降は史上最低の降雨量が続きました。オーガニックのぶどうの樹は根を深く張っているのでまだマシですが、化学農業の畑では根が浅いため旱魃(かんばつ)の被害が大きく出ました。
7月の最高気温平均32℃、月間降水量6㎜という猛暑と乾燥は、ブルゴーニュ最高のヴィンテージともいわれる1959年を上回るほどで、そのまま続くと旱魃になりかねませんでしたが、8月になって発達した積乱雲が恵みの雷雨をもたらしてくれたことで救われた感があります。
前代未聞のヴィンテージか?
暑さと乾燥はぶどうにとっては嬉しいもの。健康で糖分たっぷりのぶどうが収穫されます。ただ過度の水不足のため果汁量は少なく、とても濃いものになります。濃い果汁を仕込めば、もちろん濃いワインになり、いろいろな味や果実味が生まれるのは間違いありません。
これまで味わったことのない偉大なヴィンテージを予感します。
ボジョレーの畑では
ブルゴーニュ地方からボジョレー地方の4月の遅霜の被害は深刻でしたが、ボジョレー ヌヴォーを造ってくれるシュブラン家の畑はなだらかな丘の上のため被害なしで済みました。
6月からの熱波では積乱雲が発達して近所でも雹の被害が出ましたが、幸いこちらも被害を免れました。

収穫は、8/30に始まりました。昨年は9/22なので、3週間以上早かったことになります。

乾燥が強く、ぶどうの実は水分が少ない凝縮されたいい状態で収穫できたとのことです。ただその分、果汁の量は例年よりもだいぶ少な目です。
ボジョレー ヴィラージュ ヌーヴォーを造ってくれる、レニエ村のランポンさんの畑は高い丘の上で遅霜にも雹にも遭わず、8月末に無事収穫し、果実味が豊かで飲みごたえのある美しい色のワインになっていると、嬉しい便りが届いています。
2022年のボジョレーワインの味わい予想
猛暑でぶどうは糖分をたっぷりと作り、乾燥で水分が少ない果汁なので、酸味は少な目でしょう。また病害もなく健康に実ったので、微生物汚染はないでしょうから、雑味に繋がるリスクが極めて低く、果実味が強く、またアルコール分も高めで香りが華やかになワインに仕上がるのは間違いありません。
その上、平年より3週間も早い収穫で醸造期間がたっぷり取れるので、11月の解禁日までにはある程度熟成してくるでしょう。
ここまで乾燥した猛暑の夏というのは、僕の経験にはありません。1959年以来と言われています。ブルゴーニュの1959年は見つけるたびに購入しても、裏切られたことが決してない素晴らしいヴィンテージです。ただボジョレーがそんなに持つはずもないので未経験、どうなんだろうとワクワクしています。
田村安
マヴィ代表
著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード
日本書部門2004年ベストワインブック賞を受賞
フランス政府より農事功労章シュヴァリエ勲章受勲
ボルドーワイン騎士Connétablie de Guyenne
*記録的な猛暑だった2022年、今年のボジョレーヌーヴォーは間違いなく最高の出来になります。ぜひ飲み比べてお楽しみください。
