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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第31回】前提を覆してみる

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回はフランス、山の家での大雨の思い出を基に、ついつい癖で設定してしまう「前提」を見直して、その先の体験を楽しんでみよう…という勇気をもらえる話です。[月2回更新]

■梅雨入り~雨も自然からの恵み

 関西では例年より3週間も早く梅雨入りしました。今年はいわゆる爽やかな季節がほとんどないままに梅雨か、、、と落胆も隠せないのですが、その一方で田んぼに関わっている人からは、今年はこれまででいちばん水に困ることになりそう、という話をちらほら聞いていたので、この雨が少しでも助けになればと思っています。実際この雨のお陰で私たちの田んぼにも順調に水が溜まりだし、今年も昨年に引き続き、遅めの6月半ば頃に田植えをする予定でボツボツと準備を始めています。

去年知った人知れず咲く美しい花。空木(ウツギ)という名前です

 雨と言えば、フランスと日本の間で受けたカルチャーショックの1つに、「フランスの人はあまり傘をささない」(ヨーロッパ全体かも?しれません)というのがありました。
 防水のヤッケのようなものをフードまでしっかり被って出かけたり、少々の雨だったら傘はささない人が多くて、初めの頃はとても驚いた記憶があります。もともと傘があまり好きではなかった私は、初めの頃こそ戸惑ったものの、その便利さが気に入って、自分自身もすぐにあまりささない派になりました。特に神山に引っ越してからは、車移動が増えたこともあり、よほど降っている時に近所に行く場合を除き、傘を使うことがほとんどなくなった気がします。

 街で暮らしていると、髪も洋服もずぶ濡れになってしまうし、行く先も室内なので移動の間は傘をさして雨を避けるわけですが、山林に分け入ったり、田畑の作業をする場合は、移動した先も外で、手が塞がると作業ができないので自然と傘ではなく、防水の服を着て出て行くのが最適、というのが実情なのだと思います。
 晴耕雨読もあまり雨が続くと水路の状況を見に行く必要が出てきたり、特に梅雨のように雨量が多い場合は、問題が起きていないかのチェックは必須です。

■嵐の大雨でのある体験

 フランスでお世話になっていた山の家も、山から湧き出る地下水を引いてきていたので、雨が降るとその水源に泥が溜まることが多く、泥が溜まると水を引くパイプにその泥が入ってしまいます。なので、まとまった雨が降り出す前にはそのパイプを水源から外すため、いつも誰かがヤッケを着込んで山の中にすっ飛んで行く必要がありました。

 山の家で過ごしたある夏の夜。
 夏の間ほとんど雨は降らないのですが、時に嵐が襲うことがあります。坂道だと滝のように水が流れてくるくらいの大雨が降るのです。その夜もそんな感じで、確かテラスの屋根を拡張して、雨の日でも外で食事ができるようになっていて、夕食が済んだ頃だったと思います。キッチンの手伝いでアルバイトに来ていた高校生たちがその大雨の中、裸足で飛び出して行ったのです。
 そして私にも「気持ちがいいからHiroyoもおいで!」と大騒ぎ。夏以外の季節は東京でオフィス勤務しているいい大人の私は、もちろん大人の理性が先に立って、「そんな大雨の中出て行く訳ないじゃない!」と心の声が言ってます。
でも子供たちは執拗に呼ぶし、それはそれは楽しそうだし、迷っているのがつまらなくなってついに私も飛び出しました。

嵐の夜、こんな庭に飛び出しました

■「いつもの」考えと行動から一歩踏み出してみると…

 いつもの原っぱも暗闇では足元がわからないけれど、恐れず裸足でガンガン進む心地よさ。大地と土の感覚が足からしっかり伝わって、本当に気持ちいい。そして頭から全身大雨に打たれることの快感。
 頭の中で考えていた「ずぶ濡れになるし、、、」という小さな懸念はすぐに吹き飛んでしまうほど、今でも何度も思い出すくらい気持ちのよかった体験です。きっと誰よりも一番キャーキャー言ってた気がします。
 大きな岩から川に飛び込んだ時の、あのためらいとやってみたあとの爽快感にも似ていたかも(そう言えば、あの時も子供たちにヤイヤイ言われてようやく恐怖を振り払って飛び込んだのでした)。

夏の間一緒に働いていた子たち(懐かしい。みんなもうお父さん、お母さんになってます)

 大人になるに従って、理性や常識や未知への恐怖感、好奇心の欠落、やらなくてもいいという諦めのようなものがどんどん折り重なって積み上がって行くけれど、外的要因でもなんでも、それを崩してくれる機会があったらぜひ飛び込んでみることをお勧めします。
 その先に広がる世界は、きっとこれまでと違ったもの。

 旅に出られなくても、ステイホームでも、そんな体験はきっと身近なところにもたくさんあるのだと思います。「そんな大人気ない」「考えたこともなかった」「できる気がしない」・・・といったことや、これまで全く心が反応しなかったことなんかにヒントがあるかもしれませんね。

ある日の、想像もできないくらい美しかった夕焼け

(2020.05.26)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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