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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第57回】宇宙と太陽と命

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は、日々自然と接し、作物を育てたり、命を頂いたりする中でいくつかの新鮮な驚きをまとめています。自らが様々気づいて感じ取ることは大切ですが、その感じ取る能力も環境によって濃淡がありそう。また自然から学べる機会が増えると更に良いかもしれませんね。皆さんは生きものとしてのエネルギーを存分に使っていますか?[月2回更新]

■自然からの学びは興味が尽きない

6月になりました。6月というと「梅雨」というイメージですが、ここ数年の私の6月の記憶は爽やかで過ごしやすい日々が多くて、「あれ、6月ってもっと雨が降ってじめじめしてた気がするんだけど、こんな気持ちよかったんだっけ?」と感じる年が続いています。

さて、今年の6月はどうなるでしょうか。

クローバーが大好物の鶏さんたち

農園ではつい先日、新たな命が誕生しました。今年の1月の終わりにやってきたおちびさんたち(鶏)は3月には卵を産み始めてまずそれにびっくりしていたのですが、そのうち1羽が5月のある日、突然産んだ卵の上にじっと座って外に遊びに行かなくなりました。

私たちが手を近づけようものならすごい勢いで怒った声を出し、しっかりガードします。最初の間は、他の鶏たちも変わらず毎日同じ場所で産むので、そうすると抱き始めた子は日々増えていく卵を次々にお腹の下に入れて「もうさすがにはみ出るよ」というくらいまで抱える始末。これまで飼っていた雌鳥は一度も卵を抱こうとしたことがなかったので、この誰にも教えられた訳じゃないのに【ある日突然始まる母性】に本当に驚きました。
それはもう神聖で神秘でしかなく、同じ時期にやってきた他の雌鳥は全くそんな様子もないのになぜこの子だけが?なんのタイミングでそうなるの?他の子も突然抱き始めるの?etc…と疑問はつきません。

にんにくを収穫

思えばフランスの山の家に通うようになってから、そして神山町に引っ越し、さらに農作業を本格的に始めて、外にいる時間が増えてからはより一層、自然は本当にあらゆることの先生だなという想いが深くなっています。どれだけ自分が何も知らなかったか、今でも知らないことだらけかということが、関われば関わるほどわかってきます(これは自然に関わらず、何事もそうですね)。学校で習うことももちろん大切だし、親や周りの大人たち、友人たちに教わることも数えきれないくらいたくさんあります。
でも自然から学べること、気づかせてもらえることは規模の大きさも桁違いな上に、種を超えての学びなので、本当に興味深くて飽きることがありません。

これまでにもこのコラムで自然から気づいたことや学んだことをあれこれ書いてきましたが、衝撃的で忘れられない体験の1つは光に関するもの。

■環境でも差がある、光の感じ方

あれはフランスの山の家で初めてみんなと夜道を歩いた時。私には一歩先も見えないくらい、真っ暗で深い闇の中をみんなはどんどん進んでいくのです。本当に大袈裟でなく、私は怖くてどこに足を出したらいいかもわからないくらい見えなくて進めなかったんです。もちろんみんながスタスタ進めたのは、土地勘というか場所がよくわかっているからというのも理由の1つなんですが、それが日常だとその暗さに目が対応するようになっているんですね。

ずっと都市で暮らしていた私は、夜に外に出て真っ暗という体験はまずないし、家の中でも暗くなれば灯りをつけます。だから、そんな暗闇は自分史上初めてで、目も本当に驚いたことと思います。一方で、ある夜は月明かりが眩しすぎて夜中に目が覚めました。こちらももちろんそれまでしたことのなかった体験。満月の光はそれほど明るいんだ!と本当に驚きました。そんな私も、今では夜の暗さにもいくつもの段階があるということが実感としてわかります。光と言えば、朝日や夕日も日々本当に異なる強さや色で、これもそれを見られる時間に外にいなければ、こんなにも変化しているんだとなかなか気づけなかったことです。

余談ですが、今神山では夜にはたくさんの蛍が舞って美しい限りですが、よく光るピークの時間帯が2つくらいあるとか、水辺の足元に飛んでいる印象だったけれど、水辺に木があるところだと木の上の方まで飛べることも目にするまで全然知りませんでした。

そして干します

春から夏に向けてはあらゆる生命が本当に活発になり、草も木々も爆発的に成長し、虫の動きや種類も地表・地上を問わずものすごく増えます。あまり遭遇したくないヘビ(苦手です…)もたくさん出てくるし、鶏たちも虫やカエルを探して熱心にあちこち動きます。そして秋から冬へと少しずつ活動が緩やかになっていきます。人間もしばらく草刈りをおやすみできるし、日照や温度の問題で農作物も限られたものしか育たなくなります。

つまり、光や温度が生物にはものすごく重要で、わかりきっていたことだけれど太陽なしには何も始まらないんだなと改めて気づいたり。光も温度も両方注いでくれる太陽の存在って凄すぎると今さら何を…だけど、感謝しかありません。日頃意識しない宇宙のおかげで私たちの生活は成り立っているんですね。

ああ、生きているって本当に不思議です。

18:50でこの明るさ!

(2022.06.08)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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