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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第53回】平和への道

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は神山町でも美しく咲きほこる桜の花々を見ながら、世界の紛争に関して、生活するベースから考えてみた内容です。大きい視点、上からの視点とは別に私たちの日々のあれこれ、積み重ねている日常に何かヒントは見いだせないでしょうか。足元には可能性が沢山、存在しているかもしれません。[月2回更新]

■満開の美しい桜を眺めながら

今年はどうなるだろう?と思っていた桜の開花も、結局例年と同じくらいのタイミングで咲き始めました。数日神山を離れていた間にちょうど準備が整ったようで、3月30日見事に満開になりました。毎年同じ光景を見ているはずなのに、どうしてこんなにも心踊り、そして魂が揺すぶられるほどに美しいと思うのか。車で走っていても歩いていても、ハッとするほどの美しさに目も心も奪われっぱなしです。

近所にこんな立派に咲いている桜—今まで気づきませんでした!

世界中に住む全ての人たちが、きっと私たちと同じように春に咲く花に心をときめかせたり、新しく芽吹く木々や草花、ぶんぶんと飛び回る虫たちに季節や生命力を感じ、春の訪れをウキウキした気持ちで迎えることでしょう。たとえ常夏の国などで四季がそこまではっきりしていない国はあるにせよ、この時期にはこういう花が咲くとか、こういう天気の日が多いとか、1年の中にはきっとそれなりの変化はあって、そうした変化がある時には、ちょっと特別な気分を味わっているのではないかと思います。
家族や友人たちといつまでも語り合ったり、おいしい食事を共にすることはおそらく楽しみの1つでしょう。何かを育てたり、狩猟採取に出かけてうまくいけば大喜びで周りと分かち合い、うまくいかない時は悲しんで、なんらかの方法を考え、しのいでいくことでしょう。スポーツに興じたり、趣味を楽しんだり、日々の日課をこなしたり。
汗水垂らして達成したことには満足感と喜びがあり、努力してもうまくいかなかった時は悔しくて、もっとやりようがなかったのかと考える。
嬉しくて仕方ない時も、悔しい時も辛い時にも涙がこぼれるーー80億人近い人々の人生は、もちろん1つ1つ違ってそれぞれいろんな時間を過ごしているけれど、人間にはおよそ共通した気持ちや感情もまたあると思います。

たまねぎも春を感じて勢いよく芽を出し始めました(畑の方もとても元気!)

■足元を見つめて、生活を大切に

そして、その共通した感情の1つが争いを好まず、平和を求めるということ。心身の平穏があるからこそ、日々のさまざまなできごとにも思いきり対処できるし、いろんなことに頑張れるのだと思います。ウクライナでもロシアでも、心の底から戦いたい人など誰もいないはず。それがこのような事態になってしまうのには、政治的・経済的な駆け引きが背後でうごめくからでしょう。
支配したい、足りないものを手に入れたい、私は専門家じゃないので今回のことについて詳細な知識も意見もありませんが、結局のところは国同士の欲望のぶつけ合いが戦争というところにまでエスカレートしてしまっているのだと思っています。
自分たちがもっているもので生きていくことができたら、わざわざ他所まで出かけて行って、奪ったり交渉したりする必要もありません。足元には無数の可能性があるのに、それには見向きもせずに周りに求めてしまっているのではないでしょうか。しかも1円でも安く、相手の労働条件や生活環境などはお構いなしで、ただこちらが少しでも得をするようにと立ち回っているのが今の世の中(日本だけじゃなく、ありとあらゆる国が)なように感じます。

小さな仲間も卵を産めるようになりました

平和を構築するには、たとえ時間がかかろうとも、それがどんなに些細なことに思えても、まずは自分の身の回りを平和にすることでしか始まらないと、今強く思います。自分で耕して、水を得ることができて、火を焚くことができれば怖がる必要はないし、誰かのものを奪いにいかなくてもいいんです。
その技術を教えあって、助け合うことができれば、奪われることもないのです。何よりたくさんあるものを分かち合うことができたら、奪い合う必要もないのです。

コロナウイルスが蔓延した最初の頃、この連載の始めの方でも書きましたが、「分かち合える、手の届く範囲に暮らしを取り戻す」ことは平和を考える上でもとても大切で、自分自身ももっと力をつけて、技術を身につけたいと感じています。今はまだ石油にも電気にもガスにも頼ってばかりですが、少しずつでも依存を減らしていくことが安心感にもつながっていくように思っています。
ものすごく遠回りに思われるかもしれませんが、それが平和な世界を現実のものにするための、私にできることであり、活動です。折しもキャンプやアウトドアが大きく注目を集め、焚き火などにはまっている人も多い様子。楽しみからスタートして、それが自然と共存することを体感し、身の回りにあるもので事足りるという実感へと繋がっていけば、小さな平和が満ちていって、やがて世界を包んでくれるかもしれません。夢物語だと言われても、信じて動かなければ始まりませんから、私はそれを信じて望む未来を創る日々を過ごしていきます。みなさんもよかったらぜひ身の回りの平和から始めてみませんか。

雨に煙る日もまた美しい

(2022.04.06)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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