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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第45回】住まいについて考えてみる

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は日々の起点、住む所について。気候変動で夏も高温が続くここ日本。これ以上自然環境に負担をかけず、より快適な暮らしを目指すには、どうすれば良いのでしょうか。ぐんと寒くなるこれからの季節にも考えておきたいテーマです。[月2回更新]

■住環境の改善、通気性?気密性?

11月最後の日は、季節外れの台風のような大嵐。強風凄まじく、夜は結構な量の雨と雷まで鳴っていました。一夜明けた12月は冷え込みが厳しく、今年は神山の地元の方たちが「寒くなる、雪も去年とは比べものにならないよ。」とおっしゃっているくらいなので、心して冬と向き合わねばなりません。年によってはスタッドレスタイヤも必要なかったことが多かったですが、今年は早々に履き替えておく方がよさそうです。

標高700mの町内の山からは、吉野川や海の方まで見渡せます

思えば神山に来た最初の冬も、オニヴァをオープンした12月の割と早い段階で雪が降りました。次の年も確か同じだったと記憶しているので、神山町は12月を迎える頃いったんググッと冷え込むのが通例のようです。その後また1月終わりから2月にかけて雪が降るタイミングがやってきます。とはいうものの、いずれもどかっと降り積もるほどではなく、せいぜい道の脇に数日残るくらいで、車が通る道路は早々に溶ける程度の積雪です。昨冬は、3年ぶりくらいにそうした感じの雪が降りました。(コラムでも写真をお届けしましたね)

2018〜2020年の冬は2シーズン続けていわゆる暖冬で、雪が降らなかっただけでなく、もう来るぞ、来るぞと思っていた寒さがやってこないまま春になり、拍子抜けしたような記憶があります。一方で寒すぎて、水道管が凍って水が出なくなったことも過去に二度あります。家も古い家はとても寒く、暖めても壁・窓・床からどんどん熱が出ていってしまうので、大袈裟じゃなく、外と同じようにフリースやダウンなどを着込んで過ごさねばならないほど。

こちら見学のできる美しい日本家屋ですが障子の向こうは外という恐ろしさです(広島県の鞆の浦にて)

そんな中で、気になるのが「断熱」というキーワード。家の中よりも外に出た時の方が暖かく感じることも多々ある家の寒さを思うと、考えずにはいられないことの1つです。
京都の普通の一戸建ての家から、東京のマンション暮らしになった最初の冬の驚きは忘れられません。マンションってこんなに暖かいんだ…と本当に感動しました。エアコンが設備としてついていましたが、ほぼずっとお世話になる必要がなく、機密性が高いことのメリットを体感することになりました。古い一戸建ては断熱していない上に、隙間が多く、仕切りも障子やふすまといった紙でできていることが普通で(本当に古い家では上の写真のように、一番外側の建具が障子で、障子の次がいきなり雨戸のようなパターンさえあります…)、隙間風にも悩まされます。湿気の多い日本では、気密性を重んじることで生じるカビや腐敗の方が危険性が高く、夏や梅雨時期を考えての通気性が重視された結果なのでしょうが、なんとか快適になる手段はないかと思うもの。
暖房器具のスイッチをオフにした途端、ものすごい勢いで冷えていく室内が、魔法瓶の温かい飲み物のようにいつまでも暖かく保たれれば快適に過ごせるし、エネルギーの使用も抑えられていいことづくめです。

■断熱効果と環境の関係

日頃そんなことをしょっちゅう考えているので、先日神山町にてエコ断熱DIYのお話とワークショップがあると聞いて、参加してみました。そもそも2階の窓の建具がどうにも心許ない仕様のため、キッチンの改修の次は、あの窓を二重窓に!と思っていろいろ調べていたのです。
今回のワークショップでは、私が二重窓をDIYするためにネットの情報記事で何度も目にした、ポリカーボネートという素材を使用して断熱障子を作る、という話だったので自分で試してみる前に雰囲気もわかるので、ありがたかったです。ワークショップをした場所は、町が管理しているお試し住宅(移住を考えている人が最大1.5年を条件に住むことができるシェアハウスです)で、断熱障子設置後の効果は聞いていないのですが、和紙1枚だった障子が、和紙1+ポリカーボネート+和紙2という3層構造(ポリカーボネートの元々の構造にも空気の層があるので空気の層も3層)になり、ポリカーボネートで隙間を密封するので間違いなく暖かくなっているはず。

以前も登場した神山の木材で神山の大工さんが建てた木造の集合住宅の床下は、しっかり断熱材が入れられ、熱風が通る管を這わしてあります。床板も厚め。

断熱は冬の寒さだけでなく、夏の暑さを防ぐことにも繋がります。オニヴァチームと訪れたファビアンの家も、ベリュウさんの家も、ゴダンさんの家も、いずれも断熱が行き届いていました。結果、真夏で外はかなりの暑さなのに、家の中はまるで冷房が効いているかのような涼しさ。ゴダンさんのところでは、ワインを醸造するための蔵にもその仕組みを取り入れて新たに建設していたので、年中ほぼ一定の温度とも言える環境で作業ができ、人もワインも快適な状況が実現されていました。

ゴダン家で使われていた断熱用のエコ建材

マヴィのワインに辿り着いたみなさんはきっと「食」を取り巻く環境には大いに関心のある方々だと思いますが、「住」環境も生きていく上では結構重要なパートを占めます。各家庭が空調によって快適な温度に調整するには、莫大なエネルギーを必要としますが、断熱や、熱の放出・蓄熱の効果をきちんと検証したり、窓の位置や材質と太陽の入ってくる向きを検討するだけでも暮らしはグッと心地よいものへと変わっていくはず。今ある住まいの改変は条件上難しいことも多いかもしれませんが、こんな視点で住う場所について考え直したり、家を建てる機会がある方はそこへの投資を惜しまないことで、未来の快適な暮らしへと繋がっていくと思います。

私も壁がボロボロになっていた窓下に断熱材を入れ、板で防いで快適さと見た目をDIYで改善しました

(2021.12.08)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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