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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第43回】文化とは

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は日常で意識せずよく使う単語「文化」について語り合った時のことを中心に。言葉も人によって用いられ方が微妙に違います。定義づけの段階で面白い…やはり他者と話し合うって大事ですね。[月2回更新]

■〇〇って何?素朴な問いから始めてみよう

前回のコラムでは一気に冬になったかのような変化があったと書いたのですが、その後はまた暖かい日が続いた神山。朝夕は冷え込みますが日中の暖かさで、9月にいい香りを漂わせていた金木犀が再び咲いたり、クルミが新しい葉を出したり。友人の家は今くらいになると毎年てんとう虫が家の中に入ってきていたそうなのですが、今年は1匹もいないとか、私の家でも、すっかり姿を見せなくなっていた蚊がまた孵化したのか飛び回っていたり、とこの目まぐるしい気候の変化に自然界も翻弄されているようです。

今年もいっぱいこの穂が出ました。

11月3日は文化の日。ポカポカ陽気に雲1つない青空がどこまでも美しかったこの日は、第12回目の哲学カフェの日でした。(昨年7月から、私が大体月に1回主催している小さなイベントのこと。詳細はこちらをご覧ください。)
ここ最近は、私が関わっている寮の高校生も参加してくれるようになったり、場所を変えてみたりと、この小さな試みも少しずつ変化しています。先日は寮生たちの要望で、希望する寮生たちと番外編の哲学カフェも実施しました。それもとても面白かった!
大人中心の毎回の哲学カフェとは明らかに違う何かがありました。ある1つのテーマについて、思うこと、疑問、自分の考えなど、テーマから外れなければ何を言っても誰から否定されることもなく、何かジャッジされることもなく話せる時間は、大人はもちろんのこと、子供にとっても、大人と子供の間とも言える時期にある彼らにも貴重な時間なのかもしれません。

きのこにとってすごく良い季節?!原木ヒラタケです!

この日のテーマは、参加者の一人が「今日は文化の日だから、文化について話すのはどうでしょう?」と言ってくれたことから、「文化とは何か?」ということについて考えを巡らせてみました。この言葉を知った恐らく小学生の頃からずっと、一体何回使ってきたかわからないほど生活の中に当たり前にある「文化」という言葉。けれど、改めて「文化とは?」と問い直してみると、自分でも全く簡潔に答えられないし、参加者の皆さんも同じく頭を抱えているようでした。

どんな話をしたか、少し紹介してみましょう。 英語では文化はcultureで、cultureはcultivateという言葉から派生しています。耕す、耕作するという語源から、少なくとも西洋では「文化」とは、どうやら自然のままではなく、人間が手をかけたり、関わったもの、というのは1つの定義として成立しそうです。余談ですが、昨日集まったメンバー内では、英語の「culture」と日本語の「文化」が全く同じもの(概念)を指すかどうかはわからない、むしろ違うのではないかという意見が多数でした。

さあ、文化の定義づけは続きます。

■話し合うことで様々な視点を発見

「伝統と文化」というように伝統とセットにして使われることが多いので、何か受け継いできたもの、受け継いでいくものと言えるかな?と提案した人がいる一方、とはいえ文化は時代や状況によって変化していくものでもあるなあと答える人。例えば、「○○地方の××という集落の文化は〜」とか「企業文化」「若者文化」というような形で、ある特定のグループや所属している集団の特徴を示す時にも「文化」という言葉は使われている。「文化」とは社会組織ごとに存在するものでしょう。などなどなど。

そんな話をしていたら、ここのところ毎回来てくれている高校生がこんなことを言い出しました。日本国憲法では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という条文があります。ではここでいう「文化的な生活」とはいったい何を指すのでしょう?と。
おお、また難題が投げられました。
確かに文化的な生活とは(もう一つ言えば、文化的な最低限度の生活って、何をもって最低限度が保証されていると判断するのだろう?という疑問もありますがこれはまた別の機会に)どうなっている状態を指すのでしょう?
ある人は「消去法で考えると、健康であればそれでいいのかと考えたときに、それ以外のもの全てを指すのでは?」と問いかけられました。確かに「人はパンのみに生きるにあらず」という聖書の言葉もあります。こちらは、人が生活していくには、物質的な満足だけでは不十分で、精神的な満足や充足も必要であるというもの。そう考えると文化とは、何か人間の心を豊かにするプラスアルファなものと言えるかもしれない、という意見も出てきました。例えば、土器や石器以前の時代には、食べ物はあったけれどそこには文化はなかったとか。

お茶作りも文化?

憲法の話が出てきたことや、健康で文化的な最低限度の生活という言葉が呼び水になったのか、その先は少し幸福のことやつい先日の選挙のことも絡まって政治の話にも派生して行きましたが、今回も頭を捻りつつ、発言が誰かに偏ることもなく、参加者全員が同じくらい発言をして1時間半が流れて行きました。
個人的には、今でも「文化ってなんなんだろう?」と頭の中で反芻しています。これまでの哲学カフェではどちらかというとある事象(AIは人間を超えるか?歳を取るってどういうこと?等)がテーマになることが多かったように思いますが、今回はあまりにも自然に使っている1つの言葉がテーマとなったこともあり、とても新鮮でした。
1ヶ月にわずか1時間あまりではありますが、ある1つのことに真剣に考えをめぐらし、それに関心を持つ人たちと意見をかわしあえるこの場はとても貴重です。毎回テーマはその場で決まります。なんとなくイメージしていくこともありますが、参加者の方々から出てくることが9割以上で、思いもよらないことを考えることになるのも良いきっかけ。

みなさんにとって文化とはなんでしょう?よかったら秋の夜長にぜひ考えみてくださいね。

新鮮なイワシでオイルサーディンを作りました。料理も文化ですね。

(2021.11.10)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月にカフェビストロ、Café On y va をオープン。(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)現在は農園作業に勤しみつつ、食だけではない、楽しくて面白くて気持ちのいい空間と時間を創造すべく、仲間たちと日々活動中。

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