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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第15回】「哲学カフェ」

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は秋の夜長に「考える」という豊かさについてです。[月2回更新]

■秋と実り~思考も実る

 すっかり季節は秋になりました。 春先に若葉が美しかった柿の実が色づいてきて、神山町のすだちの収穫はもう終盤。今年も濃い緑が美しく、薫り高い実が日本全国に旅立っています。

ご近所で実るすだち

皮をすって、実をスライスして、果汁を搾って。どんな使い方をしても美味しく、いわゆる“映える”写真にもピッタリ。程よい酸味となんとも言えない爽やかな香りで、一度知った人はすっかり虜になる、徳島の中でも生産量1位の神山町が誇る柑橘です。インスタグラムやFacebookをご覧の皆さまなら、「#神山すだち」で検索すれば、たくさんの美しくて美味しそうな写真がたっぷり出てきます。ぜひ一度ご覧くださいね。

こちらはバンズ、ケチャップなども自家製ですだちも美味しそうなハンバーガー!

 前回の第14話でご紹介したコーヒーとほんのひろば。思えば彼女たちがこの場を持ってくれたことで、私も1つ背中を押されて始めたことがあります。それが哲学カフェ。7月に第1回を始めて、9月に第2回目を開催しました。フランスに足を運ぶようになってから、フランスでは学校で哲学の授業があり、高校卒業資格試験であるバカロレアでも、文学系を志望する学生はもちろんのこと理数系でも社会・経済学系でも専門技術系でも、点数の配分に違いはあれど、受験することが必須の科目になっているのだということを知りました。しかもその試験問題を聞いて、その内容の高度さ(問題の意味を理解することさえ困難なほど!)と午前中いっぱいをかけて論述しなくてはならないということに心底驚き(しかも受験生の数だけ、先生方はその論述を採点されるということで…)、どんな話題でもみんなそれぞれの考えを持って滔々と述べる理由の1つが垣間見えた気がしたものです。

■ふと思ったことを丁寧に見つめてみる

 そんなこともあって、いつ頃からか哲学は関心ごとの1つとなり(かと言って哲学者に詳しいわけでも、哲学書を読み漁ったわけでもないのですが)、ふと思いついた不思議だなあと思うことに考えを巡らせたりするようになりました。つい最近では、こんなことを考えました。

 「海に行ってコップにその水を汲んだらそのコップの中は海なんだろうか?」海じゃないように思いますけれど、そのコップをひっくり返して水が元に戻ったらそれは明らかに海です。じゃあコップにいた間だけが海ではなかったのでしょうか??というところから派生して、逆に私が今海の中にいるとしたら、私は海でしょうか?私は私であって海なわけがない!と考えてしまうと思いますが、そもそも「海」というとき、そこには海藻も魚も砂も入っているのではないでしょうか。私が海に入っていることは遠く離れれば見えないし、近くても私が潜ってしまえばわかりません。だとすると、誰かはきっと私の入っている海を指して「あれは海だよ」と言うでしょう。さて私は海なのか、海でないのか。同様に私は森林なのか?地球なのか?反対に私の胃や血液は私なのか?・・・と考えていくと、哲学の根源的な問いの1つである「自己とはなんなのか」という問題にぶち当たります。

モロッコのAsilahという所の海

 9月の哲学カフェは私を含めて9名が集い、季節の移り変わりなどを感じるようになって自分も歳をとったなあと思う、という誰かのひと言をきっかけに「年を取るとはどういうことか?」「時間とはなんなのか、なぜ早く感じたり、ゆっくりに感じたりするのか?」というテーマで1時間話し合いました。この1時間は参加者全員にとって「あっという間だった」そうなんですが、それはなんでなんだろうね?とまた問いが生まれたり。この時間に皆さんの中から出てくる言葉や考えが本当に興味深く、この1時間の間に何度「面白い!」と言ったことかしれません。まだ2回目ですが始めてみてよかったなあという思いを強くしています。

■問いを共有できる場

 参加者9名中5名が2回連続の参加でした(前回は7名参加)。2回参加してくれたうちの一人が「日頃は答えの出ないことをわざわざ考えてみようとしないから、脳の違う部分を使っている感じがして面白い」と言っていて、なるほどと納得しました。性格的なものもあるだろうけれど、解決しなくてはならないことに頭を使うだけで時間切れになってしまって、考えても答えの出ないことや考えなくても良いことに時間を使うことはあまりないのかもしれないなあと。
 今回は自己紹介の際に「最近考えていること」もしくは「秋の思い出、秋というと思いつくこと」をひと言話してもらうことにしたのですが、それだけで向こう何回かのテーマが決まったな、と思えるくらい皆さんの視点が興味深く、また3回目が待ち遠しい感じです。

苔むす山を歩きながら思索するのも秋の楽しみ

 日頃考えないこと、考えても答えの出ないこと、けれど問いを発する前とは明らかに自分の脳内が変化しているような、そんな問いについて考え、深めていく時間。検索すると全国各地でたくさんの哲学カフェが開催されています。気になったらぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

(2020.09.30)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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