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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第42回】エネルギーのこと

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は私たちの生活の根本から見直しを迫られ、逃げられない問題、エネルギーの話を中心に考えています。様々な矛盾を抱えながらどうするべきでしょうか。そして一呼吸。イタリアの新商品ペコリーノ種の白ワインと合わせて美味しいグラタンもご紹介しています。[月2回更新]

■地方で暮らして更に実感、エネルギー問題

お盆あたりの長雨の後、このまま秋になるの?どうなるの?と思いながら迎えた9月。10月になっても気温が下がらず、「いつまでも暑いねえ。」というのが合言葉のようだったのに、一晩で夏から冬になった?と思わせるような急激な展開でめっきり寒くなりました。 慌てて暖房器具を引っ張り出したり、洋服をさっと羽織れば対応できる人間と違い、自然界はこんな時、どんな反応をしているのでしょうか。木々は?草花は?動物たちは?土の中は?いずれもとても気になります。

稲刈り中に鶏がエサを見つけます

神山町に来て自分の中で大きく変わったことの1つとして、エネルギーについてよく考えるようになりました。もちろん2011年の大震災以来、脳裏を去来する問題であることは確かですが、地方で暮らすことは東京や京都で暮らしていた時とは明らかに違う、もっと現実的でごく身近なこととして生活に直結している大きなテーマです。
まず、インフラの構造が全然違います。家が密集していない地方では、ガスはプロパン、お風呂は今も薪風呂の家も結構あります。エネルギーとは違いますが、水道も全戸に行き渡ってはおらず、家が点在している地域では、山や谷から自ら水を引いて利用している家もあります。下水道はもちろんなく、各家庭にある浄化槽を通じて排水が川へと流れて行くか、直接排水の家もあります。

たびたびこのコラムでも登場する神山の人工林の話。
「木がこれだけあるのだから、カフェオニヴァのエネルギーはぜひ木で賄いたい」と、友人は建物の改修の際にウッドボイラーと薪ストーブの導入を決めました。ウッドボイラーはご存知の方も多いかもしれませんが、焼却炉のような装置に木を入れて燃やすことで熱を出し、その熱でお湯を温めて、給湯に使うものです。さらにカフェオニヴァでは、そのお湯で温めた不凍液がお店の床を通ることで室内を温める床暖房の仕組みも取り入れていました。

竹炭を作っています

その効果はとても大きく、コンクリートの厚い床だったので温まるまでには時間はかかるものの、一度温まると蓄熱してくれることもあり、床から建物がほんわりと温まり、翌朝仕込みに行った時も家よりもずっと暖かくてありがたかったです。また、天井からのエアコンの場合、サーキュレーターなどで工夫をしないと暖かい空気は常に上に行ってしまうので、足元は寒いままという状況が起きがちですが、床が暖まった状態で薪ストーブを焚くといい具合に空気が循環して、心地の良い暖かさが部屋中を包んでくれました。

神山町内の別のカフェの薪ストーブ

農場にいるときも、その辺りの枯れ枝を集めてくればあっという間にお茶を沸かすことができます。6月にご紹介した田植えの時のランチもそんな感じで火をおこして作りました。自宅でも調理も可能な薪ストーブを導入できたら、森の中をきれいにしながら家では暖をとり、調理もできて少なくとも一石三鳥にはなるなと思いつつ、比較的家の多い地域に住んでいるので煙の問題があって踏み切れていません。

■再生可能?どうやって元に戻す?

一方で、大型のソーラーや風車の建設の話も続々と聞こえてきますし、実際に工事が始まって胸を痛めている案件もあります。まだ記憶に新しい熱海の土石流も、メガソーラーの残土処理が問題だったとの見方もある中、これからが非常に懸念されるのが、今神山町と山を越えた上勝町の間の尾根筋に建設中の15基の風車。
風力は再生可能エネルギーではありますが、エネルギーとしての安定性は非常に弱く、風車自体の耐用年数も20年弱と非常に短いものです。そのために、何万年もかけて育まれてきた自然や山々がいとも簡単に削られ、コンクリートが流し込まれ、運用が始まったらずっと振動を送り続けるという状況が生まれます。
当然、そこに住んでいた動物たちは生活する場所を奪われ、移動せざるを得ないし、生態系も大きく変わることでしょう。絶滅が危惧される動植物は本当に危険に晒されることになるし、目には見えない微生物のレベルまで考えた時には想像もつかない大きな変化が起こっているかもしれません。水系にも影響してくることでしょう。

夕暮れ 刈った稲を干しています・・・この風景を残す為にやれることとは

こういう事態を目の当たりにしたり、耳にしたりするたびに、1992年リオの地球環境サミットでのセヴァン・スズキのスピーチが頭に蘇ります。
「どうやって元に戻したら良いかわからないものを壊し続けないでください。」
本当にその通りだと思う。不動産だって、返すときは現状復帰が求められます。今の人間のシステムでは購入したかもしれませんが、所詮は地球からお借りしている土地。20年経って風車の耐用年数に限界が来たときに、きちんと元に戻せる覚悟がなければ事業に手をつけられないようにはできないものか、と考えてしまいます。それは資源を掘り尽くしたり、プラスチックを作り続けたりしている事業についても同様に。

■新商品、南マルケの白ワインと神山の里芋グラタン!

さて、ちょっとヒートアップしてしまいましたが、少しワインでも飲んで落ち着きましょう。

南マルケ州、カプリオッティ家の新商品ピスティーロがマヴィから届きました。黄金色の美しい色味のこの白はアルコール度数なんと14%!白にしてはずいぶんと高めの濃厚な味わいです。

とはいうものの、気持ちのよい酸味や柑橘の香りが爽やかさも加えてくれていいバランス。単体でチーズなどとゆっくり飲むのもよし、焚き火で炙ったチキンに神山名物のすだちを添えるのもよさそう。
私は今回このワインの濃厚さと、そろそろ美味しくなってきた神山の隠れた名産の里芋を使ったグラタンを合わせてみました。里芋さえ皮を剥いて茹でておけば、そのままオーブンに入れられるお鍋を使って食卓まで1つの鍋(フライパン)でできてしまいます。
たまねぎは薄切りにし、鶏もも肉は2-3cm角に切っておきます。フライパンに好みでバターもしくはオイルを温め、たまねぎと鶏肉をよく炒めます。軽く塩胡椒して、そこに小麦粉を振り入れて炒め、そこに牛乳を少しずつ入れながら伸ばしていきます。程よい硬さになってきたら、先にゆがいておいた里芋を加えて絡め、チーズをかけてオーブンへ。チーズが溶けて焦げ目がついたらできあがりです。
この方法だとダマにならず、鶏肉とたまねぎの旨味が全てソースの中に取り入れられる上に、とても手軽に作れるのでお薦めですよ。

あつあつ里芋グラタンとピスティーロ

(2021.10.27)

ピスティーロ 白

イタリア・マルケ州の爽やかで飲みごたえのある白ワイン。青りんごなどの爽やかな香りに柑橘類や白い花など多彩な香りが楽しめます。果実味があり、しっかりとした味わいの1本です。

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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