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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第14回】「世界をつくる小さな一歩」

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は神山から発信されたラジオの話から行動が生み出すパワーのこととこれからが楽しみ!ボジョレーと合わせるレシピです[月2回更新]

■本当に伝わるには…

 先般の台風10号は規模が大きく、地域によっては大きな被害が出たところもありました。毎年台風が起きるシーズンは、農作物に携わる人にとっては例年のこととはいえ、気が気ではないことでしょう。ワイン農家さんたちは春の霜、初夏から夏のヒョウ、水不足、冷夏、さまざまな気候要因で毎年誰かが頭を悩ませていましたが、今年になってようやく実感として、本当の意味でその大変さを少しは理解できた気がします。幸い私たちは大きな被害もなかったですが、地域の中にはビニールハウスの躯体がぐにゃりと曲がってしまい、中に撒いた種もろとも諦めなくてはならないと話している方もおられました。

黒豆も着実に実が付いてきました

 人間の世界は他のどの動物とも違っていて、面白いですね。誰かが発したり、作ったり、見せたり、書いたり、動いたり、何らかの形で表現したもので創りあげられていく。それは誰かに向けて用意されたり、発せられたものであることが多いけれど、ただなんとなく、ただ発したかったから呟いたり、世に出したものもあるでしょう。書籍になっていなくても、写真集じゃなくても、特に今の世の中は各個人がいろんな形で自分自身を表現できる場も手段も充実していて、一昔前には想像もできなかったけれど、世界のどこへでも、自分自身が全く知らない国の、年齢も暮らし方も全然違う人にさえも自分が発するものを届けることができるようになりました。

 先日神山町の仲間が、新型コロナウイルスの関係でリアルに実施できなかった自分たちの活動を、ラジオという形で発信するという試みを行いました。小さな町からの小さな声。50分あまりの、大切に大切に作られたその番組とそこから続く物語を通じて、私は世界を変えるのは誰でもない、この世界に住む一人一人なんだということが、体にすっと入り込んだように腑に落ちました。冒頭に書いた農作物に携わる人々の気持ちを体感したように。理屈ではわかっていた、世界を動かすのは私たち一人一人なのだということを、身をもって。

■一歩が次の一歩に繋がって

 東京でオーガニックなライフスタイルを広める活動をしていたときからわかっていたし、何ならそういう言葉も発していたと思うけれど、実際にその想いが伝わって、伝わった先の心が動いて、その先の行動が変わっていく様を目にするのは言葉にできないほどの感激がありました。言葉のもつ力が確実に誰かの心に届いて、そのエネルギーが何らかの作用を及ぼしているのです。ここに起きた反応はとても小さなものかもしれないけれど、世界はその総和で成り立っていることを思えば、小さな一歩が踏み出された功績はとてつもなく大きい。水面に落ちた一滴の雫が生み出す波紋のように、それは少しずつ伝播して、やがてどこかの誰かの次の一滴を生み出す後押しをするのかもしれません。

 ボジョレーのシュブランさんがオーガニック転換し、しかもビオディナミ農法を採用するに至ったきっかけとなったのも、ご友人がそのやり方でワインを造っておられたからです。そのお友達は自分の信念に従っていただけで、誰かのやり方を変えようと思ってはいなかったかもしれないけれど、その毎日の営みが、地球が持続可能な方法で、素晴らしい味わいを生み出せる農法に誰かが一歩を踏み出す後押しをすることになりました。

ボジョレーの生産者シュブランさん

■作品のようなボジョレーと合うレシピ

 そうして生まれた作品から、今日はボジョレー 2018と夏の間中ずっと私たちを楽しませてくれた畑の恵み、ナスとトマトをたっぷり使ったお料理を合わせてみました。
 2018年は特別太陽をたくさん浴びた年だったようで、これガメイ?と思う力強さを持ちつつも、口に含んでいる間にはかわいらしいいちごのような赤いベリーの香りや、スパイシーさもあわせ持ち、余韻も程よくて朝夕が涼しくなってきたこの季節にぴったりの赤!と大満足でした。ここのところガメイもボジョレーもしばらく飲んでいなかったので、一緒に居合わせた友人たちもとても喜んでくれました。

 まずナスを5mmくらいの薄切りにし、塩を振っておきます(A)。トマトも同じく5mmくらいの輪切りにしておきます(B)。玉ねぎをみじん切りにし、合挽肉とともに炒め、塩・こしょうを加えます。お手元にあれば、少しナツメグやコリアンダー、シナモンなどを足すとこのワインのスパイシーさに調和してくると思います。最後にしめじなどのキノコ類を加えさっと合わせたら(C)、グラタン皿に(A)水気を絞ったナス→オリーブオイル→(C)炒めた挽肉ときのこ→溶けるタイプのチーズ→(B)トマト→粉チーズと重ね(私はこの工程を2回繰り返しました)、190℃のオーブンで20分前後焼いてできあがり。なるだけ手軽になるようにナスはそのまま入れていますが、事前にオリーブオイルで焼いておくとコクが増します。

彩り鮮やかなオーブン焼き、とっても美味しそう!

もし食べきれずに余ったらトマトを加えてパスタソースにしたり、カレーにしたり。甘辛く煮てみても印象が変わって面白いと思います。

(2020.09.16)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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