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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第6回】土を耕す、思考を耕す

徳島・神山町で人気の「カフェ オニヴァ」長谷川浩代シェフの連載

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。 自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…これから定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は、手作業で得られる効果とは?!そして今年も大好評、記念白ワインにぴったりレシピも![月2回更新]

■ぐんぐん育ち始める生きものたち

 神山一の特産物であるすだちの花が開花して、甘いどこかエキゾチックな香りが漂っています。梅やすだちのように目立たないけれど、実はたくさん作られているキウイも今が花盛りで、今日偶然案内していただいた場所でたくさん目にしました。下を向いて咲く可愛らしい花です。町内各所の田植えも最盛期に入ってきて、春先から既に賑やかだったカエルたちの大合唱がいよいよ高らかになる季節の到来です。そして雨とお日様のパワーでどんどん大きくなる草とのせめぎ合いの時期もスタートしました。

キウイの花です。葉っぱもこんなに丸くて愛らしい

 性格なのでしょうか、黙々と作業するのが結構好きです。長い間お世話になっていた南フランスの山の家でもしょっちゅうそんな時間がありました。食事の量は大抵50人前後分なので、トマトソース1つ作るにも、クスクスを煮込むにもまずは大量の野菜の皮むきやカットが必要になります。広大な敷地に実る果物が熟したら、デザートやそのまま食べるのにも使うけれど、残りはジャムにするためにひたすら種を取り出して、適当な大きさに切って大鍋に入れてグツグツ煮込みます。
 畑に出れば、例えばインゲンは2〜3日おきにどんどん実るのでひたすら摘むとか、掘られたたまねぎの根を切るとか、バジルやミントの葉をちぎり続けるとか、種まきや定植はもちろん、足腰が痛くなってくると辛くはなるものの、草抜きさえ嫌いではありません。誰かとお話ししながらも楽しいし、ただ一人で淡々とやることもまた良いのです。

■手を使いながら、余白を作る

 なぜだろうかと考えると、土に触れたり、野菜や果物の感触を味わいながら目の前の作業に没頭することで頭が空っぽになるからかなと思います。まるでメディテーションのように頭がすっきりし、ついさっきまで気づかなかったことに気づいたり、ああそういうことなのかと突然何かが理解できたり。
 土を耕しながら、手を動かしながら、思考も脳内も耕されるような気がするのです。コンピュータのデフラグのようなものなのかもしれません。あちこちに溜まった記憶や思考の断片がさーっと整理され、余白が生まれてくる。その余白ができることによって新しい発見があったり、面白い考えが浮かぶのでしょうか。その整理される感じが爽快で、それには黙々と作業することが私には適しているようです。

 今、自分自身も少しずつ畑の作業などをするようになって、これまでの人生で一番お天気のことを気にしながら過ごしていますが、マヴィの農家さんたちとお付き合いしているときにも、皆さんの毎年の天気の記憶がすごいことに本当に驚いた思い出があります。
○年はこんな年だったから、虫が発生して大変だったとか、その次の年はこんな感じでぶどうの出来がすごく良かったとか、20年前とかでもよく覚えておられるのです。当時夏の3ヶ月以外は都会で暮らしていた私は、「農家さんというのは自然環境を相手にしているから、自分の力ではどうしようもないことがあるとわかっていて、それだからこそこんなに寛大で何事も受け入れる強さがあるのだなあ。」と実感した記憶があります。

そして、ぶどうを栽培して収穫してワインを醸造するという一連の流れを繰り返しているように思える彼らの暮らしも、実は1つとして同じ年はないから、毎年毎年が新たなチャレンジなのです。

以前、オニヴァに訪れた時のタリさん(一番右の方)たち

 日頃は無口で、ぶどう栽培とワイン造りにただただ打ち込んでいるタリ家のガブリエルさんがあるとき漏らした言葉は、いろんな場面で心に蘇ってくる、一生忘れられないひと言でした。

「僕たちワイン農家はね、一生でせいぜい30〜40回くらいしかワインを造ることができないんだよ。」

「また今度」とか「次回はこうしよう」とか、その修正やチャレンジが毎年1回しかできない世界。しかも同じ条件で試せることはなく、積み重ねていく経験だけが頼りの世界。そんな風に生み出されて、海を渡って私たちの元にやってくるワインたち。どれを抜栓するときも、今年はどうだったかな?どんな仕上がりになったんだろう?と純粋にワインの味を愉しむことはもちろんですが、いろいろ思い浮かんで気になります。

■記念白ワインに是非これを♪

 今年は特にウイルスの影響で到着も遅れたマヴィ創立記念オリジナルワイン。ガブリエルさんにとって何回めのワインだったんでしょうか。今年は洋梨やアプリコットの香り、凝縮感もあるので、マヴィでもクリームやバターを使ったお料理がお勧めされていましたね。
だったらあれにしよう!と思いついたのがヨーグルトチキンです。

鶏の胸肉を一口サイズに薄切りにし、塩胡椒しておきます。ヨーグルトに塩少々、潰すかみじん切りにしたにんにく、好みでハーブやスパイスを加えて混ぜたものを切っておいた鶏肉にまぶしてマリネしておきます(冷蔵庫で30分〜1時間程度でOK)。
オーブンシートを敷いた天板にマリネした鶏肉を並べ、粉チーズをたっぷりかけて180℃で8〜10分焼いてできあがり。フライパンで焼いても良いですがその場合はチーズが焦げて剥がれやすいので、焦げ付きにくいフライパンを使用するか、クッキングシートなどを敷いて焼くと良いでしょう。
すごく簡単ですが淡白な胸肉にコクが加わり、ワインとの相性もとても良くなるのでぜひお試しくださいね。

シンプルだからこそ、ワインも引き立ちますね

(2020.5.27)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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