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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第7回】地域の資源を地域で活用する

徳島・神山町で人気の「カフェ オニヴァ」長谷川浩代シェフの連載

マヴィの黎明期を支えた 元スタッフの一人長谷川浩代さん。人気のビストロ「カフェ オニヴァ」改めB&B On y va & Experienceにて体験講座を担当したり農園作業に勤しんでいます。 自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は、神山町で進められている未来に繋がる集合住宅プロジェクトについて。[月2回更新]

■町が続いてゆける住まいとは?

 今年は例年より早く5月末に梅雨入りした四国です。とはいえ天気予報はどちらかというと晴れマーク続き。今年は春も雨があまり降らなくて、「今年は雨が少ないから…」というのが挨拶がわりになっているほどです。梅雨らしくしっかりと雨が降ってくれないかなあと田畑を眺めながら祈る毎日です。

 神山町には、この町がこれから先もずっと続いていくように実施されている取り組みがいくつもあります。今日ご紹介する集合住宅プロジェクトもその1つ。2016年に計画がスタートし、今も現在進行中で今年中に全てが完成する予定です。全20戸、子育て世代を中心とした世帯向けの住宅ですがバリアフリー設備を備えたユニットや単身者向けのユニットもあり、全戸入居されると80名くらいの人が過ごすと想定されています。

 このプロジェクトの特徴はとてもたくさんありますが、このコラムのテーマでもある「未来につながる」という視点でご紹介してみたいと思います。

いろはと番号で組み合わせる場所を指定

 神山町は町のメインストリートへの入口的な場所にある「木のまち神山」という大きな柱が象徴しているように、かつては林業が非常に盛んな町でした。第1話でも紹介しましたが、面積の86%が森林でその大半が杉や檜の人工林です。
 この住宅の第1の特徴は「神山町認定の町産材だけ」で造られる木造住宅だということです。それにより、町内の林業関係者、製材業者にまとまった仕事が発注されました。より俯瞰的に見ると、町が町産材を認定し、その材が使われていくことで、山が整備され、それにより山の保水力が高まり、川や海にも良い影響を与えることにつながります。

■町での循環、技術の継承

 第2の特徴とも言えますが、原料の木材が町産なだけではありません。建設に携わる工務店、大工や左官、水道・電気工事、もちろん基礎を作る土木業者なども全て町内の方々で建てられる住宅なのです。工期を4期に分けることで、金額的にもマンパワー的にも町内の業者で担える規模の工事となり、地域に建つ住宅を地域の材料で、地域の人が建てるということを可能にしました。そうすることで、地域の資源が地域で循環するという状況が生まれます。

組まれたところ

 第3の特徴として、「100年持続できる建物」を目指して造られていることです。そのため伝統的な手刻み(柱と梁や土台との組み合わさる部分や、梁を接ぐ加工を手で施すこと)が採用されています。
 現在は宮大工さんなどを除き、その手法を使う機会が非常に減っているようですが、家のもちもよくなり、若手の大工さんにその手法を受け継ぐことも可能となります。また通常は建設途中の建物を間近で見ることはなかなか無いのですが、定期的に見学会が催されて、こうした大工さんの手仕事も壁の中に埋もれて見えなくなる前に見せてもらえるチャンスも用意されているのはとても面白いと思うし、嬉しいです。

■最新技術も取り入れ、次世代につなげる

 第4の特徴は、そうした伝統的な製法で建てられている一方で、最新のエコな設備も各所に設けられていることです。町で作られている木質ペレットを活用した熱供給システムや、びおソーラーの導入により化石燃料エネルギーの使用が抑えられる仕組みになっています。また住宅が建てられる前の土地に立っていた建物を解体する際に分別して、基礎工事に活用することで新たに別のところから材料を持ち込むことなくリサイクルも実現しています。

 第5の特徴として、住宅敷地内の植栽のため、地元に生える樹木の種を拾って、苗を育て、植えてメンテナンスをするところまで地元の高校生とともに取り組んでいます。樹木ですから育つまでには時間がかかりますが、高校生たちは卒業後もここに戻って来れば自分たちが植えたかつてのどんぐりがどんな風に育っているか見ることができるでしょう。

完成した住居。明るく、木の良い香りで満たされています。

 ……と例を挙げればきりが無いほど数々の工夫がなされたプロジェクト。すでに入居されている人々からの評判も上々です。もうすぐ町内の誰もが使える共有スペースも完成するので、そうなると入居者に関わらず町民がいろんな形で出入りする場所になっていくことでしょう。

 このプロジェクトのこれまでの一連の流れが動画に収められています。
 ご関心のある方はどうぞ下記からご覧になってみてください。神山の風景もあちこちに見えますよ。そして新築に入居できる最後のチャンスとなる第四期の入居者募集もまもなく始まるそう。気になる方はお気軽に神山つなぐ公社(contact@tsunagu-local.jp)まで問い合わせてみてくださいね。
https://www.youtube.com/channel/UCNN20kQqqYi1j2DVTOemeEg/videos

建設中の風景を対岸から眺めて

(2020.06.10)※今回の掲載写真は一部を除き神山つなぐ公社提供です

長谷川 浩代 プロフィール:
京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月にカフェビストロ、Café On y va をオープン。現在はビストロからB&B On y va & Experienceに改め、体験講座を担当したり農園作業に勤しんでいる。食だけではない、楽しくて面白くて気持ちのいい空間と時間を創造すべく、仲間たちと日々活動中。 

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