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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第49回】グリーンウッドワーク

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は木を削って物を作る体験について。ユニークなのは電力などのエネルギーに頼らず、人力で可能な範囲の作業だという点。環境負荷をなるべく減らしつつ、シンプルな道具でクリエイティブな作業に挑戦して行きます。持続可能とは何かを考えさせられる内容です。[月2回更新]

■生木を利用するワークショップ

立春を迎え、少し寒さが緩んだような明らかに違う空気を感じています。とはいえ、まだまだ油断はならず、しばらくは厳しい寒さが続くでしょう。日は確実に長くなっていて、17時を告げる「七つの子」のメロディーが流れてもまだこんなに明るい!と驚いています。夕焼け空はいつも本当に美しくて、時にピンク色に、時にオレンジ色に空を染めていろんな形の雲を彩っています。

いつも本当に美しい夕焼け空

神山町に住む友人が、昨年の秋頃から本格的にワークショップを始めました。その内容は「グリーンウッドワーク」。ご存知の方はおられるでしょうか?グリーンウッドとは、生木(なまき)のことを指します。生木とは、伐採したてのまだ乾燥させていない木のこと。その生木を使って電気や機械といった動力を使わずに、人間の手と斧やナイフなどといった伝統的な手工具だけを使って、スプーンやお皿などの小物や家具をつくるものづくりをグリーンウッドワークといいます。(詳しくは、NPO法人グリーンウッドワーク協会のウェブサイトをご覧ください)

グリーンウッドワークの特徴は、大きく言うと4つあるそうです。
1つめは、毒性をもった木以外であれば、どんな木でも使って作れることです。森で切った木も、庭の剪定で出てきた木も材料になります。
2つめは、自分でのこぎりで倒せる大きさの木であれば、チェーンソーも、製材するための機械も、電気も使わず、人力だけで仕上げ、形ができあがってから自然乾燥させるので、乾燥にもエネルギーを使用しません。とてもエコなものづくりです。
3つめは、外でも家の中でも、道具を使えるスペースさえあればどこでも手軽にできることです。
そして最後4つめは、木を割るための斧や、削るためのナイフや道具を使用するだけなので、その道具が使えて、挑戦してみたい人であれば、老若男女を問わず誰でも親しめるということです。

枝垂桜をどんどん削ります

神山町はこの連載でも何度も書いている通り、たくさんの木があって、グリーンウッドワークをする材料には事欠きません。その友人は手先が器用で、手で何かをするのが大好きな人。黙々と削り続ける作業がとことん性に合っています。さらに大好きな植物と触れられて、これをする人が増えれば、森が整えられていき、また刃物が重要な役割を果たすこと、できる限り近くにその刃物をメンテナンスしてくれる人がいることも非常に大切で、鍛冶屋さんの技術を後世に残すことにもつながるという、色々な目的から「これは伝えるしかない!」と考え、ワークショップという形で教え始めてくれました。

■何よりも木の美しさに夢中!

私も黙々と何かをすることは好きだし、やってみたいと思っていたところ、昨年末に「なんとも美しい紅梅の木が手に入ったので、枝垂れ桜の白い材とでめでたい紅白の箸置きを作るワークショップやるよ」と告知があり、参加してみたのです。そしたら、とにかく夢中になれて楽しくて、気持ちいい。削り方によっては日頃動きが悪くなりがちな肩甲骨のあたりが大きく動いたりもして、体にもよさそう。現にその友人は腰痛が無くなったと言っていました!そして何より木目や木の色、削るうちに現れてくる木の表情の美しさに心が奪われます。

こちらが色鮮やかすぎて驚いた美しい紅梅の木(乾くにつれ、色は薄くなります)

その日も何度「美しい!!!」と口にしたことか。。。これは絶対もっとやってみたい、と早速家に帰ってナイフを注文してしまいました(笑・道具はつい欲しくなってしまうタイプ)。そうしたらつい先日1月の終わりには、スプーンづくりのワークショップ開催ということで、そちらにも張り切って参加しました。

本来は木を切り倒すところからやればよいのですが、効率よく、初めての人でも疲れずにその日中にほぼスプーンの完成形を作れるようにするプログラムということで、既に厚さ6〜7cm、幅8〜10cm、長さ25cm程度に斧で割った材料を用意しておいてくれました。

3名の参加者がそれぞれ斧でスプーンの形に近づけたところ(私のは真ん中)

そこから参加者は友人の説明を聞きながら、ステップバイステップで進めていきます。まず最初は斧を使って、大まかな形を作り出し、その後ナイフを使ってスプーンの口に入る部分を削ったり、全体を削って整えていきます。途中、外で焚き火で作ったスープオピストゥ(バジルペーストとチーズを最後に加えて食べる野菜と豆のスープ。南仏の夏の味)といただき物の猪肉を燻製し、たくさんのキノコを使ったピラフでランチタイム。
根を詰めると腕や手が疲れてしまうけど、ちょっと休むとググンと回復するので、途中でチョコをつまんだり、腕をぐるぐる回したりしながら進めます。要所要所では先生である友人がみんなの作業を手伝ってくれたこともあり、夕方にはなんとかスプーンの形に! この冬は、別の友人が仕事でたくさん木を伐採していろんな木が手に入ったので、時間を見つけて削っていきたいと思っています。

少し焦がしてしまったけど、とても美味しい燻製ができました!

木がすぐに入手できない都会に暮らしている方でも、例えばこちらのサイトなどで生木を購入することも可能です。自分の趣味が森の整備、持続可能な暮らし、伝統技術の保護などに役立つとすればとても嬉しいことだと思いませんか。こうしたことが好きな方には本当におすすめです。

(2020.02.09)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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