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【第25回】「仕事はなんですか」

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回はみんなが無関係ではいられない仕事の話。働くってなんでしょう…?[月2回更新]

■土と木と空に囲まれ、春の準備

 ポカポカ陽気が続いて、「春がやってくるのももうすぐだね!」などと話していた昨今でしたが、翻って突然雪が降ったりとまだしばらくは寒さも続きそう。今年は畑の作業が少なかった1月に畑の年間計画も綿密に立て、とにかく1にも2にも、土づくりが大事!ということで、畑に植わっている野菜が少ない今だからこそできる土づくりに励んでいます。

枯れた草や籾殻、馬糞、鶏糞、稲わらなどを土とともに耕します


 木の伐採に適した季節も終盤に近づいてきたこの時期は、森に携わる人も仕事が立て込んでいるよう。先日は友人たちが長らく手の入っていなかった森の木を伐ってくれて、その小さな森に明るい光が差し込むようになりました。
 プロの林業家さんと共に、いろいろ教えてもらいながら木を倒していた友人が「林業家さんの仕事は空を創る仕事ですね!」と言ったのですが、実に的を射ていて、素晴らしい表現。林業家の方も自分の仕事の別の側面を見たようで、とても嬉しそうでした。

手始めに3本倒しただけで、随分明るくなりました

■仕事は何のため・・・?

 3人のレンガ職人の話は有名なので、目にしたり聞いたことがある人が多いでしょう。「あなたは何をしているのですか?」と声をかけてきた旅人に対し、3人のレンガ職人はそれぞれこんな風に答えました。

1人目
「見ればわかるだろう。レンガを積んでいるんだよ。朝から晩まで、暑い日も寒い日もひたすらこればかり。本当に辛いし大変な仕事だよ!」

2人目
「見ての通り、壁を作るためにレンガを積むのが仕事なんだ。家には妻と子供がいてね。家族を養えるだけの仕事があってありがたいと思っているよ。」

3人目
「何をしているかって?歴史に残るような大聖堂を作っているんだよ。完成したら、何世代にもわたって、多くの人がここで祝福を受け、苦しみを和らげることになるだろうね。」

 たいていの人にとって、人生の多くの時間を費やすことになる仕事。それをしている目的、あるいはその仕事の先に何があるのか、どうなって欲しいのか。そして、それが自分や家族のためになることはもちろん、より多くの人や地球環境、将来世代の役に立っていく…。それが見えていると、人はより大きな喜びや誇りをもって、毎日を生き生きと過ごし、辛いことや苦しい時も乗り越えていけるのかもしれません。

シャンパーニュの畑
シャンパーニュ、ブリアール家の気持ちよさそうなぶどう畑

 マヴィの生産者さんの中でも、特にオーガニックがまだまだ日の目を見ていなかった頃からオーガニックでぶどうを栽培して、ワインを造っていた人たちはよくこんな話を聞かせてくれました。

■オーガニックを選んで、継続する理由

「自分たちがオーガニックを始めた頃は、周りの人はみんな農薬を使っていたから、虫が発生すればお前のせいだと責められ、村八分にされたんだよ。」
シャンパーニュのブリアール家、お父さんのジャンさん)

「自分が始めた頃は、周りに誰もオーガニックに取り組んでいる人がいなかったから、誰も教えてくれないし、もちろん教科書もない。全部自分で考えて、試してやってみるしかなかったんだ。」
ニームのカバニスさん

 そんな状態でも屈せず諦めず続けてくれたのは、農薬や化学肥料によって土や水、空気が汚染されては、将来的に自然も人間も立ち行かなくなるだろうと考えたから。防御マスクをして撒かねばならない薬品が、地球にとっても人間やその他の生命にとっても良いはずはないとわかっていながら、目の前の事態を回避するために使用するという矛盾を起こしたくなかったから。
 そして、その土地やぶどうに備わった力が最大限に生かされるやり方で育てることこそ、最上のワインになると信じていたから、なのだと思います。

カバニスさん、作業中の手元。働く手は魅力的です

 私自身、社会人になってからもあれやこれやとウロウロして、今でもそんな状態が続いていて、何か1つのことをずっと続けている人から見ると支離滅裂な感じだろうと思います。ただ、自分が何のためにそれをやっているのか、その仕事の先に思い描いている世界はいつの頃からか変わらなくなった気がします。
 この春からは、また新たなチャレンジが始まるのですが、これまでの仕事人生の中では、一番若い人たちと接する仕事です。人生折り返しをとっくに済んだ私には伝えたいことがありすぎて、どうやったら彼らの記憶の引き出しに入り込み、彼らに必要なタイミングで思い出してもらえるかなあと考えています。

 みなさんの仕事は、何ですか? 私は、誰もが自分の気持ちに正直に、それぞれが本当に大切に思うことをきちんと大切にできる世の中にするために、いろんなことに関わっています。

土に混ぜ込むために稲わらをカットしていたら、鶏が寄ってきました。虫とか餌を物色中。

(2021.02.24)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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