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【第23回】「竹が教えてくれる暮らしの変化」

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回は人間の生活スタイルの変化が自然のサイクルにも大きな影響を及ぼす一例、竹の話です。[月2回更新]

■この時期は「整え」にぴったり

 大寒に入りました。立春までの間寒さのピークになり、体も一年で一番こわばってしまう時期なのだそうです。もっとも寒いこの季節に体を合わせようと、体が一番頑張る時期で体調も崩しやすいとか。
 無理をせず、静かに身の回りを整えたりするのにぴったりのタイミングとも言えそうです。木々や草花は自身が凍り付いてしまわないように樹液を下ろしたり、枯れてしまったり。でも土の中はこの極寒の中、着実に春に向けての準備が進んでいます。この時期は虫の姿も激減し、めったに目にすることがないのですが、少し気温が上がるとどこにいたのか姿を表します。虫の存在は暖かさのバロメーターの1つになっています。

整え時期に竹垣ワークショップに参加しました

 神山町の1月・2月は本当にひっそりとしています。寒いので地元の人も必要なこと以外出歩かないし、町外からやってくる人もぐっと減ります。
 思いっきり寒くなると、滝が凍りついてしまう現象である「氷瀑」で有名な神通の滝を見に来る人で多少賑わうこともありますが、どの飲食店やお店の人も挨拶がわりに「うーん、誰も来ない…」と言い合うことがしばしばなほど。
 けれど冒頭で紹介したように、本来はそういう時期だから、自然と人も活発に動かないのだなと改めて納得しています。昔の人々も農閑期であるこの時期は、稲わらで縄をなってわらじを編んだり、竹を使ってカゴを編んだり道具を作ったりして、来たる春に向けて準備をしていたことだと思います。

凍った神通の滝

■生活スタイルと竹の関連性

 竹と言えば里山の風景では必ず目に入ってくるもの。それもどちらかというと、美しい竹林というよりは、竹林に駆逐された状態が目に浮かぶのではないかと思います。繁殖力が高く、地下茎を使ってあっという間に増えていくため、手が入っていない山裾や川べりなど、少しでも竹があると見る見るうちに竹だらけになってしまいます。

よく見ると杉木立の中に竹がびっしりと生えています

 本来は冬の間(竹の切り旬=竹を伐採するのに適しているのは11月初旬。その時期に切った竹は、腐ったり劣化しにくいのです)必要な道具を作るのに不可欠な存在でした。
 竿竹、しゃもじやへら、匙、箸、鬼おろし、蒸篭、茶筅、花入、竹箒、熊手、カゴ、ざる、行李、竹垣、竹塀、農業用の支柱、樋、建築用の竹小舞等々、少し頭の中で思い巡らせただけでも、かつては生活のあらゆる場面で竹が使われていたことがわかります。
 そのため、ひと昔前は家の裏に必ず竹を植えていたそうなのです。それが今活用されない時代になり、手を入れられなくなった竹林は増えるがままの状況になっており、里山の頭を悩ます問題の1つにまでなってしまいました。

 そんな問題に取り組もうと、竹細工を学び、全国各地で竹を伐採するところから竹を割ってひごを作り、それでカゴを編むという一連のワークショップを開催している人に、数年前オニヴァでもワークショップを実施してもらいました。その時にお話しされていた中にとても印象に残っていることがあります。
 最近は山にキノコを取りに行く人も、大半が収穫したキノコをビニール袋に入れてしまいますが、昔は腰につけたカゴに入れていました。でもそのお陰で山中を歩き回っている間に胞子が竹かごの網目から落ち、また地面に帰ることで毎年キノコを取ることができたのだと。最近どんどん天然のキノコが取れにくくなっているのにはそんな理由もあるのだということを知り、かつての生活は自然と人間の活動のバランスが実にうまく取れるようになっていたのだなあと感じ入りました。

■身近な道具が教えてくれる、人と自然の共存術

 生産と消費のサイクルが自分たちでコントロールできる範囲にまとまっていて、隅々まで何一つ無駄のない生活が確立されていたのだなあと。竹は道具にできることはもちろん、火を起こす燃料にもなるし、火吹き棒も竹、竹炭は農業でも非常に効果が高くて、今も自然農法界隈ではとても尊ばれています。石鹸などにも活用されていますね。春先には美味しい食材としての筍も。竹の皮は包装にも使えるし、笹の葉はちまきなどを包んだり、動物たちが食べたり。ゴミになるところがなく、全てが生活に活用できる。なぜこんな素晴らしいものを手放してしまったんでしょうね。

よく見ると枠も、止めている紐もぜーんぶ竹。こんな細いひごが作れるようになるのにどれだけかかるのだろう、、、

 自然のリズムと関係のない暮らしが主流になり、そうした作業に時間を取れなくなったのが大きな原因なのでしょう。竹ひごを作るのは慣れないとものすごく時間がかかるし、いい塩梅に剥いたり削ったりできるようになるには、それなりの期間の練習が必要ではあります。ただ、昔はそれ、子供の頃からやっていたんですよね。地元の高齢者の方にお聞きすると、小さな時はおじいさんたちに教えてもらいながら、毎日わらじを編んでいたよ、という話を聞かせてくださったりします。お正月のしめ縄も秋の収穫の大切な一部だと思うと、それを自分たちの手で編んで飾り付け、新しい年をお迎えするということがすごく自然な流れで、腑に落ちます。

 なかなか手がつけられていなかった竹ひごを作ってみようと、久しぶりに割ったり削ったりしてみて、一緒にワークショップに参加した仲間とまた勘を取り戻せるよう頑張ろうと話しています。竹垣は量もたくさん使えて、実は見た目よりもずっと簡単に作れるので、そちらを始めてみるのもいいかもしれないなと思ったりしています。

竹ひご編みのかごが完成

(2021.01.27)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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