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Le Gout Du Vin-塩澤悠ブログ

ワインと私達の今から見るエルヴァージュ

新型コロナウィルスのパンデミック状況は一向に変わらないどころか、いつまでこれが続くのだろうとつい心細くなってしまいます。
フランスでもロックダウンが延長されたり、学校などといった公共施設が閉鎖されたりと私のフランス滞在生活にも大きな影響を与えましたが、特別な管理の下で試験や試飲が行われて無事にボルドー大学醸造学部 DUAD に合格して日本に戻ってきました。
そして自分が学んだものをどう活かしていけるかと考えてマヴィに入社いたしました。
今後はマヴィのスタッフとしていろいろな情報をお伝えしていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

マヴィの特約酒販店の全国大会が1月19日にオンラインで開催され、私の実家である「酒のしお澤」として参加させていただきました。

フランス滞在中にお世話になったボワソー教授とシャトー ド ルーのセブリーヌ ブーリエさんもフランスから参加していて、質疑応答のコーナーで私はこういった質問をセブリーヌに問いかけました。

「1月下旬の今は、畑でどんな仕事をされていますか?また、気温はどれ程ですか?」

するとセブリーヌは「今ルーション地方では畑に霜が降りてきていて、なかなか仕事が進められません。剪定もこの後になるでしょう。気温は高い時で15℃から17℃、低い時は-1℃。今は霜が降りてきていて色んな微生物達の活動が停滞している時期だから今は待つ時期です。」

1月のルーションの畑(奥はピレネー山脈)

確かにこの時期は気温も下がり、良くも悪くも畑では様々な微生物の活動が緩くなります。アルコール発酵を終えた醸造中のワインの中の微生物も静かになっています。

さて、タンクや樽の中のこの時期のワインはアルコール発酵、マロラクティック発酵という醸造過程は既に終えており、ワインの中では発酵中の様な大きな動きは起きていません。この静かな状態をフランス語でElevage (エルヴァージュ)と言います。「育つ」を意味し、醸造家にとっては見守る時です。

そう、エルヴァージュとは、瓶詰まで「ワインが一番美味しくなる状態になるまで待つ」期間のことです。

エルヴァージュを経ずに瓶詰めするワインがない訳ではありませんが、それはボジョレーヌーヴォーなどの特殊な例外です。

さて、このエルヴァージュ期間に、ワインの中では何が起きているのか、詳しく見てみましょう。

エルヴァージュを理解するには、気体である「酸素」との関係性が非常に大切になってきます。

1:酸化的エルヴァージュ

造り手が意図的に酸素をワインに取り入れるエルヴァージュのことを酸化的エルヴァージュと呼びます。
酸化とは酸素が要素である対象物質の原子と結合し、別の物質が出来る化学反応です。酸素に結合された物質は一部の原子を失い還元という化学反応を起こします。
ワインの中には沢山の物質がありますが、その中で比較的最初に酸素と結合しやすい物質があります。

例えば赤ワインですと、ワインの色を作っているアントシアニンやタンニンもそのうちの一つで酸素と触れることで味わいや色合いに変化をもたらします。
これが白ワインですと、酸素が触れてしまいクルミやカレーなどの本来のアロマとは違った意図していないアロマが出てきてしまうケースもあり、どちらかというと赤ワインに多用されます。

木製の樽は酸化的エルヴァージュに向いているので、酸化を意図とした場合樽を使用し、樽の木目から酸素が入る様にします。樽が新しいか、古いか、大きいか、小さいかで介入する酸素の量も変わってきます。ここも完全に造り手が目指しているワインの味によります。

2:還元的エルヴァージュ

還元的エルヴァージュは酸化的エルヴァージュとは反対に、ワインの中に含まれる物質に酸素を意図的に触れさせないエルヴァージュのことを指します。
作り手は酸素がワインの中に含まれている物質に触れられては困りますので、エルヴァージュさせる容器にも注意を払います。また、その容器の中でも酸素がワインに悪影響を与えるような結合をさせないためにも、比較的最初に酸素が結合する物質をワインの中に含ませておくという技術もあります

例をあげると、白ワインで滓の上でワインをエルヴァージュさせるシュールリー製法というのがあります。この滓に含まれる物質の中には酸素と比較的早く結合するものがあり、白ワインの酸化のおとりして機能する一面もあります。また農薬や化学肥料といった化学物質に晒されず、健康に育った白ワインにはグルタチオンという成分が多く含まれており、その物質も酸素と比較的早く結合してワインを守ります。
白ワインは赤ワインと違って酸素と結合しやすい物質が少ないので酸素には敏感なのです。

酸素に触れさせない容器としてステンレンスタンクが向いています。樽とくらべて容器が大きい傾向にあり、形も縦長と酸素に触れるであろう面積が少ないので、ワインのフレッシュさ、フルーティーさを大切にしたい場合はステンレンスタンクで還元的エルヴァージュを使用する組み合わせが多いです。

凍えるように寒いヨーロッパの冬、ワインは樽やタンクの中でエルヴァージュされて育っていきます。どんな育ち方をするのか気になりますが、春になりボトルに詰められて私たちの手許に届くまで楽しみに待ちたいと思います。

ブーリエ家の虹色の樽

(2021.3.8)

塩澤 悠 (しおざわ ゆう)プロフィール
長野県出身。マヴィ特約店「酒のしお澤」塩澤賢治社長の長男。
スイスのホテル学校を卒業後、ワインの見識を深めるためブルゴーニュやボルドーなどの銘醸地で学ぶ。総仕上げとして2019年にボルドー第二大学醸造学部に入学し、DUAD(ボルドー大学醸造学部公認テイスターディプロマ)を取得。
ヨーロッパ滞在中は授業のかたわらワイン産地を駆け巡り、情報収集に励む。
2021年にマヴィ入社。ボルドー大学で学んだ知識や、現地の最新情報を発信中。



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