オーガニックワイン生産の変化-田村安2016年講演より-

これはフランスにおけるオーガニックのぶどう畑の伸びを表すグラフです。
2007年くらいはまだ1万ヘクタールくらいしかありませんでした。上は転換中も含めたぶどう畑。青色がオーガニック認証を取得したぶどう畑、赤が転換中のぶどう畑です。これがだんだんと増えてまいります。2009年になると、オーガニック認証のぶどう畑よりも転換中のぶどう畑が多くなっています。ということは、1年で倍以上増えたことになります。
その状況が2011年まで続きます。この間にすごくたくさんの農家がオーガニックぶどうを作り始めたということになります。そして、2012年になると転換中の農家がぐっと減ります。2012年以降は横バイの傾向ですが、かなりベースで変わりました。

これは2012年EUのオーガニックワインの醸造規定が統合された影響です。この統合ということは何を意味するのかというと、EUはオーガニックというものはこれからの世の中を支えるものとして、たくさんの補助金をかけてオーガニック農業を増やしています。そうすることで21世紀も22世紀も使える農地を確保しています。

ただぶどう畑だけは伸びなかった。どうしてかというと市場に出回るワインのほとんどは工場で作られています。工場で造られているワインと、農家さんが自分で造るワインというのは全く別ものです。9割近いワインは工場で造られています。農家さんは単純に原料ぶどうだけを作って、それを工場に納める。キロいくらという世界です。そこには農家の方の名前は付きません。

2012年のEUのオーガニックワインの醸造規定統合の目的は、オーガニックぶどうをつくる畑を増やすこと。つまり、市場のワインのほとんどは工場で造るわけですから、工場に納める農家さんの数を増やすしかない。

じゃあ何をすればよいのかということで、私が前に『オーガニックワインの本』でオーガニックワインの醸造では添加物、メタカリ、香料、Ph調整剤などを使わないと書きましたが、こういう縛りを取っ払らったということです。これらを使わないと工場ではワインを造れません。そういうものを全部解禁したことが、2012年のオーガニックワイン大増加の形であらわれています。つまり工場で造られたオーガニックワインが増えたということなのです。

すごい危機感を覚えまして、この後2年間、生産者さんたちと密に情報交換、お話し合いをしました。

これはフランスの状況なのですが、もっとすごいことが起きています。
現在、オーガニックぶどう畑の面積が多いのは実はフランスではありません。

一番はスペイン、次がイタリア、そしてフランスです。
2012年のEUの規定というのは実はイタリアの実情に合わせてほぼ設定されています。
イタリアはオーガニックの補助金を一番最初に多く付けたところです。たくさんのぶどう農家をオーガニックに変えたい。ところがさっき説明した通りイタリアはフランス以上にワインを工場で造っています。本当にいいワインもあります。ただ、それはほとんどはミラノとかトリノなどのお金持ちが消費されます。だから国際市場に出回るイタリアワインのほとんどが工場生産です。そこでEUとしてはイタリアの実情に一番近いところに、制度を合わせたのです。そのことによって、イタリアとか工業ワイン生産の多いスペインは一気にオーガニックワインが伸びたのです。たぶんみなさんもスーパーマーケットや飲食店でオーガニックワインがどっと出回ってきたのを目にされていると思います。

じゃあ、マヴィが工場生産品を扱えばいいのかというと、マヴィは田村が大手食品メーカーを退職して自分で作った会社ですから、事業フィロソフィーがございまして、そんなことはしたくない訳です。

<マヴィと他のワインの比較表>

かつてのオーガニックワインには、この表の「工業的生産」の欄にある化学物質を使うことができなかったが、2012年以降は認められるようになってしまったのです。

工業生産ワインかどうかはラベルには一切記載されていませんので、オーガニックワインを選ぶ際は、「このワインは誰がどのような方法で生産したのか?」という質問をして、答えられるお店で購入することをおすすめします。またワインを温度管理していないお店は論外です。

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