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今日も美味しく、楽しく、気持ちよく――未来につながる日々の暮らし

【第19回】「やってみたいことができるまち」

徳島・神山町からお届けする、美味しく、楽しく、気持ちよい「未来につながる日々の暮らし」

徳島県神山町に在住の長谷川浩代さん。自然豊かな神山での生活や、ワインと楽しめるおいしい食のことなど…定期的にこのスペースで色々なお話を聞かせて頂きます。今回はやってみたいことを素直にやってみれる神山町のユニークで豊かな環境について[月2回更新]

■神山町が神山町でいられる秘訣?

 ひと雨ごとに暖かさを増していく春先とは反対に、ひと雨ごとに冬の寒さに近づいていくこの頃です。人工林の多い神山町では紅葉を楽しめる場所が少ないのですが、それでもあちらこちらに黄色く色づいたいちょうや真っ赤なもみじなど晩秋を感じさせる風景が目に入って来るようになりました。棚田の風景が美しい大久保という土地には樹齢600年を超える乳いちょうと呼ばれるそれは大きないちょうの木があって、毎年勤労感謝の日には地元の方が集まって、お餅つきやちょっとした屋台の出るお祭りが開催されています。星の美しさもどんどん増してきて、天の川まで見える夜空の光景には息をのみます。

焼山寺に行く途中の真っ赤なもみじ

 前回の町民・町内バスツアーの記事を送信した際、マヴィの編集担当の方から「…しかし神山町のポジティブな動きって『やらされている感』もないし、排除するでもないし絶妙ですね。その原動力が知りたいところです。…」というコメントをもらいました。ああ、確かにそうかもしれない、神山町では地元のおじいちゃんやおばあちゃん、お父さんやお母さんたちも、子供も、移住してきた人たちも誰でもみんな「やってみたいことをやってみている」という感じがあって、生活を楽しんでいる印象があります。気張らず、ただやってみたいからやってみる。思いついたからやってみる。自分の思うことを自分らしいサイズやボリュームで、一人でも、仲間同士でも、これやってみたらいいんじゃないかなあと感じたことが実行に移されている確率がとても高いような気がしています。(統計を取ってどこかと比較したわけではないし、あくまで私の感覚ですが…)

■自然のリズムを感じ、自然から学ぶ

 それはどうしてだろう?と私なりに考えを巡らせてみました。神山の皆さんは田畑や山林に囲まれて暮らしているから、四季折々にやることがあって、これの次にはあれ、あれをやったらその次は…と、一年を通じて生活にリズムがあります。もちろん自然が相手だから、基本的には大枠で大体この時期にはこんなこと、ということは決まっているけれど、絶対の締切日のようなものは存在し得ず、毎年の天候の様子を見ながら、長年の経験で培ってきた勘やデータ、周りの人との話し合いなんかで進めていきます。つまり農業はこれまでの経験と、天候や土の状況をみる判断力を最大限に稼働させながらトライ&エラーを繰り返すのが当たり前で、失敗を恐れないというか、うまくいくことも行かないことも大らかに受け入れる素地があるのかなと思います。だから、ことの大小を問わず、思いついたことを実行してみる勇気が出やすいのかなと。

やってみよーと思って今年行った紅茶づくり~茶葉を摘んで陰干し中

 さらには、都市と違ってコミュニティも小さいので、互いによく知っていて、周りの人を助けて、助けられて生きている感じがあって、その空気感が思いついたことを気楽に「やってみよー」と思って実行に移せる場の雰囲気を作っているような気がしています。そしていろんな人が「やってみよー」と思いついたことをやってみているのを目の当たりにしたり、口伝えに聞いたりすることがまた誰かの「やってみよー」につながっているのだと思います。

有志がやってみよーと思って杉皮で屋根を葺くために杉皮を剥ぎに行ってみた~杉皮チームの活動もチェック出来ます

■人々の適度な距離と助け合い

 そう思うとチャレンジしやすい土壌ってとんでもなく大きな財産だと思いませんか?まちが生き生きと活性化する要因の一つであると思います。(余談ですが先日の哲学カフェはまさに「生き生きするってどういうことか?」が会のテーマでした)神山にいつも何か新しいことが起きていて、躍動感があるように感じるのは、この「やってみよー」と思って実行に移せる空気が一番の理由かもしれません。「いつでも助けるよ」という目に見えないけれど確かにある雰囲気は、暮らしていく上でもとても大きな安心感につながっています。今年になって本格的に田畑に力を注げるようになった私たちが、次々とあれこれ試してみることができたのは「まあ、やってみ」とニコニコ見守りながら、困ったらすぐに救いの手を差し伸べてくれる方たちが本当にたくさんいてくださるからに他なりません。相談しやすい雰囲気、持っている知識や道具も惜しみなくシェアしようとしてくださる寛容さなど本当に感謝することばかりの毎日を過ごしています。

 こうお話ししてくると、このチャレンジしやすい土壌を育んできた立役者についてもお伝えしなくては、と思うのですが少し長くなってきたのでそれについてはまた次回に。

ハザかけの風景

(2020.11.25)

長谷川 浩代 プロフィール

京都出身。南フランスの人口130人の小さなコミュニティにあるバイオダイナミック農場民宿での体験から、オーガニックな暮らしを日本に伝えるため、マヴィ株式会社にて12年余りヨーロッパと日本を行き来しつつ過ごす。

2013年8月より徳島・神山町に移住、同12月に友人のカフェビストロ、Café On y va をオープン時から共に運営。

(2020年春より、ビストロはB&B On y va & Experienceに)

現在は農園作業に勤しみつつ、料理の提供、料理教室、執筆などを手掛けている。



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